日本で事業を始める形は、大きく3つあります。個人事業主、株式会社、合同会社です。選んだ形によって、届け出先も、かかる費用も、毎年の手続きも変わります。このガイドは、形ごとの違いを、公式ページへのリンクつきで順に説明します。公式ページで確認できなかった点には * を付けました。* のある文は、公式ページか、税理士・司法書士で確かめてください。
個人か法人か
個人事業主は、税務署に開業届を出せば始められます。株式会社と合同会社は、定款を作り、法務局で設立登記をしてから始めます。
| 個人事業主 | 株式会社 | 合同会社 | |
|---|---|---|---|
| 始めるための手続き | 税務署に個人事業の開業・廃業等届出書を出す | 定款を作り、公証人の認証を受け、法務局で設立登記をする | 定款を作り、法務局で設立登記をする。定款の公証人の認証は要らない(会社法第575条に認証の定めがない) |
| 登記にかかる税金 | なし | 登録免許税(最低額は15万円) | 登録免許税(最低額は6万円) |
| 社会保険 | 従業員を常時5人以上雇う場合(一部の業種を除く) | すべての法人事業所(被保険者1人以上)が加入 | すべての法人事業所(被保険者1人以上)が加入 |
| 決算の公告 | なし | 貸借対照表を公告 | なし(会社法第440条は株式会社の規定) |
株式会社の取締役の任期は、原則2年(非公開会社は定款で最長10年まで延ばせます)です。合同会社の役員の任期は、このガイドでは扱いません。
違いとして公式ページで確認できたのは、次の3点です。
- 合同会社の定款に、公証人の認証は要りません。株式会社の定款のみ公証人の認証が効力要件(会社法第30条)。持分会社の定款の作成規定(第575条)には認証の定めがない(会社法)。公証人手数料令が定款認証の手数料を定めているのも、株式会社又は特定目的会社です。
- 決算の公告を定めた会社法第440条は、株式会社の規定です。合同会社の決算公告は、表では「なし」としています(会社法)。
- 登録免許税の最低額は、株式会社と合同会社で違います。
どれを選ぶかの判断は、このガイドではしません。判断に迷うときは、税理士か司法書士に相談してください。
届け出と登記
個人事業主
- 税務署に、個人事業の開業・廃業等届出書を出します。出す期限は、開業した年分の所得税の確定申告期限です。様式と出し方は、国税庁の案内にあります。
- 青色申告を選ぶ場合は、別に承認申請書を出します。期限は、3月15日まで(開業の日が1月16日以降の場合は、開業の日から2か月以内)です。
株式会社
-
定款を作ります。 紙の定款には、4万円の印紙が必要です(国税庁)。
-
公証人の認証を受けます。 手数料は、資本金の額等に応じて、公証人手数料令の第35条が次のように定めています。
資本金の額等 認証の手数料 100万円未満 3万円。条件をすべて満たす場合は15,000円 100万円以上300万円未満 4万円 上の2つ以外 5万円 15,000円になる条件は、次の3つをすべて満たすことです(同じ条文)。
- 発起人の全員が自然人で、その数が3人以下であること。
- 発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨が、定款に記載されていること。
- 取締役会を置く旨が、定款に記載されていないこと。
-
法務局で設立登記をします。 登録免許税は、資本金の0.7%です。これが15万円に満たないときは、15万円です(国税庁)。
-
税務署に法人設立届出書を出します。 期限は、設立の日(設立登記の日)以後2か月以内です(国税庁)。
合同会社
- 定款を作ります。 紙の定款には、株式会社と同じく4万円の印紙が必要です。公証人の認証は要りません。株式会社の定款のみ公証人の認証が効力要件(会社法第30条)。持分会社の定款の作成規定(第575条)には認証の定めがない(会社法)。
- 法務局で設立登記をします。 登録免許税の最低額は、6万円です。税率は、株式会社と同じ国税庁のページの税額表で確認できます。
- 税務署に法人設立届出書を出します。 期限は、株式会社と同じく設立の日(設立登記の日)以後2か月以内です。
登記のあと、国税庁から法人番号が通知されます。法人番号は、国税庁の法人番号公表サイトで調べられます。
税金
消費税
基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら、消費税の納税義務は原則として免除されます(国税庁)。免除されない場合は、次の2つです。
- 適格請求書発行事業者の登録を受けている場合は免除されない。
- 特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合。
インボイスの登録で免税事業者から課税事業者になった個人事業者には、3割特例があります。令和9年分・令和10年分(個人事業者のみ)の消費税の確定申告で、納付税額を売上税額の30%にできる特例です(国税庁)。法人は対象ではありません。2割特例の適用期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間です(国税庁)。
所得税(個人事業主)
青色申告を選ぶと、青色申告特別控除を受けられます。控除額は要件によって段階があり、最大は65万円です。この最大額の控除には、e-Tax等で確定申告書等を送信することが必要です(国税庁)。ほかの要件もあるため、同じページで確認してください。控除を受けるには、確定申告期限までに申告書を出す必要があります。所得税の確定申告の期間は、一般に翌年2月16日から3月15日までです(国税庁)。
法人税(株式会社・合同会社)
法人税の確定申告書は、事業年度終了の日の翌日から2か月以内に出します(国税庁)。
法人には、法人税のほかに、都道府県と市区町村の税もかかります。法人住民税の均等割の額は、所在地の自治体が定めています。* 所在地の自治体の公式ページか、税理士で確認してください。
個人事業税(東京都の場合)
事業主控除は、年間290万円です(東京都主税局、2023年版)。第1種事業の税率は、5%です(東京都主税局)。ほかの自治体の制度は、それぞれの公式ページで確認してください。
社会保険と労働保険
社会保険(健康保険・厚生年金)
- 株式会社・合同会社: すべての法人事業所(被保険者1人以上)が加入します。
- 個人事業主: 従業員を常時5人以上雇う個人事業所(一部の業種を除く)が加入します。
出典は、厚生労働省の資料です。新しく適用事業所になるときの届け出は、事実発生から5日以内に出します(日本年金機構)。個人事業主自身の国民健康保険と国民年金は、市区町村の窓口と、日本年金機構で手続きを確認してください。
労働保険(労災保険・雇用保険)
労働者を1人でも雇えば加入義務があります。保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内に成立届を、同じく50日以内に概算保険料申告書を出します(厚生労働省)。
令和8年度の雇用保険料率は、一般の事業で、事業主負担が0.85%、労働者負担が0.5%です(厚生労働省 山形労働局)。
許認可
業種によっては、営業の前に許可が要ります。要るかどうかは、業種ごとに所管の窓口で確認します。
| 業種 | 確認できたこと |
|---|---|
| 飲食店 | 飲食店営業(食品衛生法の許可業種)です。食品衛生法の許可が要る業種は32業種あります(厚生労働省)。申請先と手数料は、自治体ごとに確認が必要です。* |
| 中古品の売買(古物商) | 東京都の場合、手数料は19,000円です。主たる営業所を管轄する警察署が窓口です(警視庁)。ほかの都道府県の手数料は、それぞれの警察のページで確認してください。* |
| 建設業 | 建築一式工事以外では、請負代金が500万円に満たない工事なら、許可は要りません(国土交通省)。建築一式工事では、請負代金が1,500万円に満たない工事と、延べ面積が150平方メートルに満たない木造住宅の工事は、許可が要りません。許可を出す窓口は、営業所の置き方で決まります。2つ以上の都道府県の区域に営業所を設ける場合は国土交通大臣の許可、1つの都道府県の区域内にのみ営業所を設ける場合は都道府県知事の許可(国土交通省)。 |
資金
- 小規模事業者持続化補助金: 販路の開拓などの費用を補助する国の制度です。募集のたびに、申請の受付期間と補助の上限が決まります。最新の内容は、ミラサポplusの公式ページで確認してください。
- 日本政策金融公庫の融資: 新しく事業を始める人向けの融資があります。新規開業・スタートアップ支援資金の融資限度額は、7,200万円です(日本政策金融公庫)。
銀行と帳簿
青色申告の最大額の控除を受けるには、e-Tax等で確定申告書等を送信することが必要です(国税庁)。帳簿の付け方と保存の決まりは、国税庁の記帳・帳簿等保存制度のページにあります。
法人口座に必要な書類は、銀行ごとに違います。口座を開く銀行の公式ページで確認してください。
毎年の手続き
| 個人事業主 | 株式会社 | 合同会社 | |
|---|---|---|---|
| 国税の申告 | 所得税の確定申告。翌年2月16日から3月15日まで(国税庁) | 法人税は、事業年度終了の日の翌日から2か月以内に申告 | 法人税は、事業年度終了の日の翌日から2か月以内に申告 |
| 消費税 | 免税事業者は申告不要 | 免税事業者は申告不要 | 免税事業者は申告不要 |
| 決算の公告 | なし | 定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表を公告 | なし(会社法第440条は株式会社の規定) |
- 法定調書: 支払が確定した日の属する年の翌年1月31日までに提出します(国税庁)。
- 償却資産の申告(東京都の場合): 1月31日までに申告します。ほかの市区町村は、日付が違うことがあります。
- 株式会社の決算公告: 株式会社は定時株主総会の終結後遅滞なく貸借対照表を公告しなければなりません(会社法第440条)。
やること
- 個人事業主、株式会社、合同会社のどれで始めるかを決めます。
- 個人事業主は、税務署に開業届を出します。青色申告を選ぶ場合は、3月15日まで(開業の日が1月16日以降の場合は、開業の日から2か月以内)の承認申請も出します。
- 株式会社と合同会社は、定款を作ります。株式会社は公証人の認証を受けます。合同会社は、公証人の認証が要りません(会社法)。
- 法務局で設立登記をします。登記のあと、設立の日(設立登記の日)以後2か月以内に、税務署へ法人設立届出書を出します。
- 従業員を雇う前に、社会保険と労働保険に加入する必要があるかを確認します。
- 業種に許可が要るかを、所管の窓口で確認します。
- 毎年、確定申告か法人税の申告、法定調書、償却資産の申告(東京都の場合)、株式会社は決算公告を行います。
よくあるご質問
個人事業主と会社、どちらで始めるべきですか?
このガイドは、どちらがよいとは判断しません。個人事業主は、税務署に開業届を出せば始められます。株式会社と合同会社は、定款を作り、法務局で設立登記をします。会社は、設立のための費用と、設立後の届け出が増えます。売上の見込みや、人を雇うかどうかで状況は変わります。迷うときは、税理士か司法書士に相談してください。
会社設立にいくらかかりますか?
株式会社の登録免許税は、資本金の0.7%で、最低額は15万円です。合同会社の最低額は6万円です。紙の定款には、このほかに4万円の印紙が必要です。株式会社は、定款の認証手数料もかかり、資本金の額に応じて3万円、4万円、5万円のいずれかです。合計は、資本金と手続きの方法で変わります。専門家に頼む場合の報酬は、このガイドでは扱っていません。
消費税はいつから払いますか?
基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら、消費税の納税義務は原則として免除されます。ただし、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合は免除されない。特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合も、免除されません。自分が免除になるかどうかは、国税庁のページか税理士に確認してください。
社会保険はいつから必要ですか?
すべての法人事業所(被保険者1人以上)が、社会保険(健康保険・厚生年金)に加入します。個人事業所は、従業員を常時5人以上雇う場合(一部の業種を除く)に加入します。労働保険は、労働者を1人でも雇えば加入義務があります。社会保険の新規適用の届け出は、事実発生から5日以内です。保険料率は、公式ページで確認してください。
開業届はどこに出しますか?
税務署に、個人事業の開業・廃業等届出書を出します。出す期限は、開業した年分の所得税の確定申告期限です。青色申告を選ぶ場合は、別に承認申請書を出します。期限は、3月15日まで(開業の日が1月16日以降の場合は、開業の日から2か月以内)です。
青色申告の承認申請は、いつまでに出しますか?
期限は、3月15日まで(開業の日が1月16日以降の場合は、開業の日から2か月以内)です。青色申告特別控除の最大額は65万円で、この額の控除には、e-Tax等で確定申告書等を送信することが必要です。ほかの要件もあるため、国税庁のページで確認してください。
出典
- 国税庁、個人事業の開業届出・廃業届出等手続
- 国税庁、タックスアンサー No.2072 青色申告制度
- 国税庁、タックスアンサー No.6501 納税義務の免除
- 国税庁、インボイス制度の負担軽減措置(3割特例)
- 国税庁、タックスアンサー No.2024 確定申告
- 国税庁、タックスアンサー No.2080 記帳・帳簿等保存制度
- 国税庁、2割特例の概要
- 国税庁、タックスアンサー No.7191 登録免許税の税額表
- 国税庁、タックスアンサー No.7141 定款に係る印紙税
- 国税庁、タックスアンサー No.5100 法人を設立したとき
- 国税庁、法人税の申告手続
- 国税庁、タックスアンサー No.7400 法定調書の提出
- 国税庁、法人番号公表サイト
- e-Gov法令検索、公証人手数料令
- e-Gov法令検索、会社法
- 法務省、商業・法人登記の申請書様式
- 厚生労働省、社会保険と労働保険の適用事業所
- 日本年金機構、新規適用の手続き
- 厚生労働省、労働保険の成立手続
- 厚生労働省 山形労働局、令和8年度の雇用保険料率
- 日本政策金融公庫、新規開業・スタートアップ支援資金
- 国土交通省、建設業許可の手引き
- 東京都主税局、個人事業税
- 厚生労働省、食品衛生法の営業許可業種
- 警視庁、古物商許可申請
- 国土交通省関東地方整備局、建設業の許可
- 東京都主税局、都税のガイドブック
- ミラサポplus、小規模事業者持続化補助金